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Turn 5

シナリオ02_黒板が白くなった朝

配信済

締切: 2026/08/03(Mon)10:00

Current Situation

検査チームの滞在も、残りわずかになった。A区の庁舎では帰り支度の気配が始まり、港のターミナルには少しずつ荷物が運び込まれている。島が一週間ぶん借りていたよそゆきの顔も、あと数日で返すことになる。

港では、出航に向けた準備が始まっていた。乗船券は窓口で買う。トカポでも札でも買えるが、買うときに一度だけ、入島記録との照合が走る。それがこの島の出口の仕組みで、普段は誰も意識しない。島を出る用のない者にとっては、一生知らないままでも困らない手続きだ。ただ、検査の三人を見送る週だけは、窓口の職員も手順を省かなかった。

待っている者たちがいる。番の世話人たちの夜の見回りは、まだ止まったままだ。
シマケイも、副署長の机に上がった布のタグを、急いで動かそうとはしていない。
どちらも同じことを言っている——船が出るまでは動かない、と。動かないということは、船が出れば動くということでもある。二つの組織の予定表に、同じ日付が入っていた。

葉山千尋という名前は、まだ島に降りてきていない。庁舎の限られた机と、この件を追い続けてきた者たちの手の中に留まったまま、井戸端には届いていない。検査の三人が船に乗るまで、それが保つのかどうかは誰にも分からない。

その追い続けてきた者たちの間では、この数日で一つの見立てが共有されつつあった。あの人は、借りたものを返して、この島を出るつもりでいる——誰が最初に言い出したのかは、はっきりしない。廃工区の戸口に置かれた紙を読んだ者、自生棟の棚から何が減っているかを数えていた者、南部林の配管の締め方を見た者。別々の場所から、別々のやり方で、同じ結論に行き着いた。

南部林の獣道には、今週も足跡が増えた。廃工区の錆びたシャッターの前には、誰かが置いていった物と、誰かが持っていった跡がある。夏草は伸びるにまかせ、点検口の蓋は、いつも通り丁寧に閉まっている。

両替所の黒板は、今日も白い。
出航まで、あと数日。そのあいだに、いくつかのことが決まる。

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その朝、ナカ商店街で最初に足を止めたのは、開店準備をしていた青果店の主人だった。四週間ものあいだ白いままだった両替所の黒板に、文字が書かれていた。

”本日 ツケなし。”

チョークの、少し掠れた六文字だった。誰が書いたのかは分からない。両替所の主人の字を知っている者は首をかしげ、違う気がする、と言った。昼までに商店街中がその話をしていて、夕方には島の反対側まで届いていた。解釈は割れた。レートが戻る前触れだという者がいた。主人が帰ってくる合図だという者がいた。ただのいたずらだという者と、いたずらにしては字が丁寧だという者がいた。帰り旗では、ツケなしということは今日は現金だけかと真顔で聞く客がいて、笑いが起きた。答えは出なかった。答えが出ないまま、島は久しぶりに、幽霊でも検査でもない話題を手に入れた。誰もその六文字を消さなかった。

検査チームの出港の日は、よく晴れた。

矢島は港へ向かう道すがら、黒板の前でもう一度だけ足を止めた。着いた日と同じ数秒だった。六文字を読み、何かを書き留めることはせず、少しだけ笑ったように見えた。それから歩き出した。その数秒を、今度も商店街の何人かが見ていた。

港には、荷役の列が朝から動いていた。木箱と麻袋が規則正しく船へ渡っていき、見送りの人々がターミナルの前にぽつぽつと立った。汽笛が鳴り、タラップが上がり、みなみ丸はいつも通りの時刻に岸を離れた。三つの皺のないスーツを乗せて、船は小さくなっていった。

見送りの人垣が散った後、島は大きく息を吐いた。その日の夕方から、D区の路上直売は店じまいが遅くなり、帰り旗の黒板には「本日のツケ可」の一行が戻った。ナンジィのレジ横には記帳のノートが引き出しから出てきた。よそゆきの顔は、一週間できちんと返却された。

A区の庁舎では、橋本勇介が窓から出港を見ていた。手には何かの書類があったが、彼はそれを開かないまま、船が防波堤の向こうに消えるまで立っていた。

そして、島の南が静かになった。

幽霊の噂は、ぱたりと止んだ。深夜に水を使う音を聞いたという者が、今週は一人もいなかった。自生棟の持っていっていい棚は、週の半ばを過ぎたところで、それ以上減らなくなった。ちょうどその頃には、棚はほとんど空になっていた。世話役の富永さんはその空の棚をしばらく眺めて、それから何も言わずに、いつも通り乾麺の袋を一つ置いた。袋は、次の朝もそこにあった。

前の晩、B区の街灯が何度か瞬いたことを覚えている者は少ない。数秒の暗闇が来ては戻り、来ては戻りした。停電には慣れている島だ。誰も騒がなかった。ただ、眠れずに窓の外を見ていた何人かは、暗闇の合間の道を、荷物を背負って歩いていく人影を見たような気がした。気のせいかもしれなかった。この島では、夜に歩く人間を数える者はいない。

同じ夜、ホアンの詰め所では、安西のデスクの端末が、その夜に限って一度も鳴らなかった。夜間のセンサーは、いつもなら猫や風で何度かは軽いアラートを上げる。その夜だけ、画面は静かだった。安西は静かな画面をしばらく眺めて、何も入力せず、コーヒーを淹れ直した。それが何を意味するのかを知る者は、翌朝の島の誰の噂話にも、上がってこなかった。

黒板の六文字は、まだ消されていない。

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