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東シナ海の孤島に、国が実験都市を作った。2026年のことだ。

ベーシックインカム、完全キャッシュレス、AI司法——本土では試せない社会実験を詰め込んで、この島が選ばれた。2029年には人口12,000人を達成し、内閣府は「順調」と発表した。

現在は2041年。あれから15年が経つ。

人口は6,800人まで減った。自動運転システムは老朽化し、島の通貨・トカポの価値は3割下落し、週1便の定期船「みなみ丸」が島と本土をつなぐ唯一の動脈だ。計画停電が来るたびに研究施設区画だけが煌々と光っているが、抗議する窓口がどこにもないことを、長く住む者ほどよく知っている。

ただし、この島はディストピアではない。

住民の多くは「なんとかなるさ」を島の気風として生きている。システムがガタつけば笑いながら回避策を探す。騒動の渦中でも、誰かがちゃんと飯を食っている。設計された理想と15年間の人間的な適応のあいだには深い乖離があるが、その乖離の中で育った文化があり、生まれた言葉があり、ここでしか出会えなかった人間関係がある。

悪役はいない。ただ、それぞれの都合と事情と、まだ答えの出ていない問いを抱えた人間がいるだけだ。


この島の基本情報

項目 内容
正式名称 渡神島技術実証特別自治区
通称 TOKAMI(トカミ)
所在地 東シナ海(架空)
面積 38.7km²(南北12km)
人口 約6,800人(計画人口12,000人)
島内通貨 渡神ポイント(トカポ)※本土円比約70%
本土との接続 週1便の定期船「みなみ丸」のみ

「渡って来た者が、渡って帰れなくなる島で、それでも今日を生きている人間たちがいる。」


シナリオ一覧

シナリオ01_草刈り機が島を縦断した日 進行中