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Turn 4

シナリオ02_黒板が白くなった朝

配信済

締切: 2026/07/26(Sun)10:00

Current Situation

みなみ丸の入港日。皺のないスーツを着た三人組——本土の会計検査チーム——が島に着いた。表向きの目的は「トカポ運営費の執行状況の確認」。滞在は一週間、帰りは来週のみなみ丸だという。島の住民は誰に言われたわけでもなく、そろってよそゆきの顔をした。D区の路上直売は店じまいが早くなり、帰り旗の黒板からは「本日のツケ可」の一行が消えた。番の世話人たちの夜の見回りも、ぱたりと目立たなくなった——探し物が見つかったのか、それとも人目を避けているだけなのか。

同じ便で、統括局が出していた照会の回答も届いた。名簿の空白に気づいた橋本が、月が明けてすぐ本土へ文書で照会をかけていた——その返事だ。2037年にC区保守に入った作業員4名のうち、退島記録のない者が1名いる——葉山千尋、当時25歳、現在29歳。四年間、この島の空調と配管を直し続けてきた人間が、この島のどの帳簿にも載っていない。

ただし、この名前はまだ島を回ってはいない。庁舎の限られた机と、この件を追い続けてきた者たちの間に、静かに置かれているだけだ——皺のないスーツの三人が、島を歩いているあいだは。

そしてもう一つ。先週から夜間巡回を増やしていたシマケイの宮本が、廃工区で「拾い物」をしていたことが明らかになった。点検口の縁に残されていた、千切れた布製の作業タグ。印字は「C区設備保守 H-7」——どの名簿にも存在しない保守班の名前だ。宮本は今週に入って、正式に田端副署長へ報告を上げた。

無人コンビニ2号店の書き換えられたタイマー。名簿の空白。廃工区のタグ。
別々に転がっていた話が、静かに一つの方向を指し始めている。

南部林の「幽霊探し」の熱は、一週間もたずに冷めた。子どもたちの興味は、検査チームの黒い鞄に移っている。

両替所の黒板は、今日も白いままだ。

GM より 共通リプライ

みなみ丸が着いた日から、島は一週間ぶん、よそゆきの顔をした。

ナカ商店街の店はどこも定時で閉まった。帰り旗の黒板からは「本日のツケ可」の一行が消え、ナンジィのレジ横にあった「記帳」のノートは引き出しの奥へ入った。D区の路上直売は日暮れを待たずに片づけられ、番の世話人たちの夜の見回りも、ぱたりと目立たなくなった。誰も申し合わせたわけではない。ただ、皺のないスーツが三つ島を歩いているというだけで、島は自分のだらしないところを一枚めくって、その下に隠した。

隠すのは得意だが、うまくはなかった。ナンジィの棚は品切れのままで、隠したところで空は空だった。ホアンの安西は例のとおり、聞かれたことのいくつかに「その時間帯はメンテナンス中でした」と答えた。A区の庁舎では朝から書類の山が動き、統括局の若手は数日ろくに帰っていない。桐島次長だけが、普段と寸分変わらない顔で廊下を歩いていた。

矢島という会計チーム主任は、そういうものを一つずつ丁寧に見て、何も言わずに歩いていった。商店街の角で足を止め、白いままの黒板を数秒眺めたことについては、その日のうちに三通りの尾鰭がついて島を回った。黒板が白くなってから、そろそろ四週目になる。島を出たい者が円を作る道は、まだ塞がったままだ。給付日から半月が過ぎても、D区の現物相場は落ち着く気配を見せなかった。入港した便がその日のうちに折り返すとき、タラップを上がっていく島民の姿はまばらだった。円がなければ、本土に着いてからの数日をどうすることもできない。

子どもたちの噂はいつでも速い。学習センターでは黒い鞄の中身が話題の中心になり、スパイだ、密売人だ、レーザー兵器だと、話は一時間ごとに大きくなった。補習に呼ばれていた者まで、窓の外の三人組を目で追っていた。学校で聞いた話をあちこちで確かめて回る者もいて、噂は島を一周するあいだに少しずつ形を変えた。大人たちはそれを聞き流しながら、いつもより静かに酒を飲み、いつもと同じ量の飯を食った。検査だ何だと言っても腹は減る。深刻な顔で味噌汁を飲んでいる男が、D区にもB区にもいた。北浦では、老人が普段どおりの時間に船を出していた。海は初夏の凪で、検査のことなど何も知らないという顔をしていた。

一方、A区の庁舎では紙が動いていた。本土からの回答が検査チームと同じ便で届いた。2037年に孫請け業者が送り込んだC区保守の作業員は四人。そのうち三人には2040年の契約終了時の退島記録があり、残る一人にはなかった。その一人が、初めて書類の上で名前を持った。葉山千尋、二十九歳。四年間この島の空調と配管を直し続けた人間が、この島のどの帳簿にも載っていない。その一行を、橋本勇介は何度も読み返していた。

ただ、その名前は島に降りてこなかった。庁舎の限られた机と、この件を追い続けてきた者たちの手元に置かれたままで、井戸端までは届かない。検査の三人が島を歩いているあいだ、誰もそれを大きな声で言おうとしなかったからだ。

代わりに島は、その人を別の言葉で呼び続けていた。南部林の縁に出るという幽霊。沖田が感心した「玄人」。橋本が漏らした「記録にない人」。どこかに、怪我をしているのに医者にかかれない誰かがいるという、誰が言い出したとも知れない話。そして今週、そこに一つ増えた。廃工区の点検口の縁に残されていた布のタグ——「C区設備保守 H-7」。どの名簿にも存在しない保守班の名前が、田端副署長の机に正式に上がった。

呼び名は増えたが、繋がってはいなかった。紙の上に載った名前と、島が使っている呼び名を、まだ誰も声に出して結んでいない。

その一週間、南部林にはまた人が入った。幽霊探しの流行はもう廃れていたのに、二人分の足音が獣道の奥へ続いた。日が傾く前に、その足音は戻ってきた。廃工区の外では、昼のうちに誰かが建屋へ向かって呼びかけていた。返事はなかった。自生棟の「持っていっていい棚」は今週も減ったが、減り方は先週より少なかった。両手で持てるだけ、日持ちのするものだけ、というやり方は変わらないまま、量だけが控えめになっていた。世話役の富永さんは棚の前で少し首をかしげ、それから何も言わずに、空いたところへ乾麺の袋を一つ置いた。

夜の帰り旗は、いつもより客が少なく、いつもより声が低かった。藤堂はグラスを拭きながら、その低い声を全部聞いていた。両替所の黒板は、白いままだった。

検査チームの滞在は、あと数日残っている。

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