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Turn 3

シナリオ01_草刈り機が島を縦断した日

配信済

締切: 2026/06/14(Sun)00:00

Current Situation

草刈り機が渡来神社に近づいている。
午前の商店街を素通りし、住宅地を抜け、三方から囲まれてもするりと抜け出しながら、機体は二時間かけて北へ進んだ。今や「また神社に行く」という認識は島全体の共通理解となっており、古参の住民は特に驚いていない。驚いていないが、止めようとしている人間が今日は何人かいる。それが前回と少し違う。
渡来神社では、神辺トオルと霧島海斗が鳥居の前で草刈り機を待ち受けている。二人は鳥居の柱をつぶさに観察し、一つの仮説に行き着いている。木製の鳥居に何度も打ち込まれた鉄釘——その量が、草刈り機の磁気センサーを引き寄せているのではないか。ノートには「鉄釘十二本以上、磁気センサー誤登録の可能性」と書かれている。南の方角から、刃が回転する音が聞こえ始めていた。
B区の追跡チームはまだ後方にいる。照屋・忍野・小此木・仲村、そして宮本と田村。止め方の輪郭は見えつつある。「気を引く人と後ろに回る人が同時に動けば」という構想と、田村が言いかけた「電源が背面に……」という言葉が、誰かの頭の中でつながりかけている。田村本人はまだ完全には白状していない。
商店街では跡部が情報を集め続けており、帰り旗の藤堂は「北北西への磁場的引力」とノートに書いた。その紙面を見た者は、すでに何人かいる。中央医療センターの坂口は、篠田看護師の「思いますが」という断定回避の言葉を、手元に収めた。
謎は、もう一歩のところにある。草刈り機が神社に着く前に動くか。着いてから動くか。あるいは今回も、「よくやった」の一言で幕を引くのか。
それぞれの場所で、それぞれの人間が、今日の午前の続きを生きている。

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仲村が宮本に声をかけた。「宮本さん。田村さん、何か知ってそうじゃないですか」。荷台の上から、笑顔のまま言った。
宮本と仲村が田村に振り向き、小此木も田村に「止めるのが正しいですよね?」と続けた。

三方向から視線が集まった田村は、額の汗をタオルで拭ってから、ようやく口を開いた。
「……背面の赤いパネルを開けていただいて、電源ボタンを三秒押していただくと、止まります」
宮本が「なんだ。それ最初から言ってくださいよ」と言い、田村が「すみません」と言った。
宮本は重ねて「他に、草刈り機の情報ってあります?」
田村は「引き継ぎ書類には初回キャリブレーション完了とあったんですが、実施場所の記録がなくて……前任の佐伯はすでに離島していて確認できないし……」とも言った。佐伯という名前が、B区の昼前の空気の中に短く浮かんだ。

止め方はわかった。忍野がすかさず自転車にまたがった。「行きます」と言って、ペダルを踏み込んだ。

その瞬間、草刈り機が北を向いた。ジグザグが消えた。動きが一直線になった。忍野の自転車を完全に無視して、渡来神社の方向へ走り出した。「あ!」と忍野から声が出た。
スピードが上がる。遠くに見えるのは、神社の鳥居か。
「今の動き、なんですか!?」と宮本が言った。全員が並んで後ろ姿を見送った。
石畳に刃が空振りする乾いた音が遠ざかっていく。仲村が「行っちゃいましたね」と言い、宮本が「うん、行っちゃいましたね」と繰り返した。誰かが笑った。田村だけが笑わなかった。

草刈り機が走り去る先、渡来神社の鳥居前では、神辺トオルと霧島海斗と跡部仁が待っていた。三人は南の方角を向いていた。
跡部が到着した時に鳥居を見て足を止めたのは、柱のあちこちに釘が打たれ、新旧の釘が混在し、角材が継ぎ当てられているのが目に入ったからだ。どうみても、専門の職人の仕事ではない。長い年月、その都度誰かが手を入れ続けてきた痕跡が、鳥居全体に刻み込まれていた。跡部はシャッターを切った。神辺は境内で拾った朽ちた鉄釘を握ったまま南を向いており、霧島はノートを開いていた。

草刈り機の音がじりじりと近づいてくる。視野に入った機体は、鳥居に向かって一直線に向かってくる。霧島がノートに書き込んだ。神辺が釘を手に持ち機体に近づいてみると、軌跡がわずかに引き寄せられた気がしたが、草刈り機には迷いを振り切るように直進した。

ついに、草刈り機は鳥居をくぐった。境内に入り込み、ひととき停止した草刈り機のランプが緑に変わる。そして、刃が草に触れる音が始まった。

B区からの一行が神社に着いたのは、それからすぐのことだった。田村も、宮本も、照屋も、忍野も、小此木も、仲村も、それぞれの足取りで境内に入ってきた。

草刈り機は今、まさに草を刈り始めた。

止める手段は分かっている。電源ボタンが背面にある。人数も揃っている。
誰かが動けば止められる。誰も動かなければ、このまま刈り終わる。どちらが正しいのかを言える人間は、その場に一人もいなかった。

照屋がオジイのもとへ向かった。「初めて来た時に『よくやった』と言ったのはなぜですか」と聞いた。
オジイはしばらく草刈り機の方を見てから、「よかったんだよ、草を刈ってくれて。それだけだ」とつぶやき、ちょうどその頃C区の担当者が神社によく来ていたこと、佐伯という名前の真面目な子だったことを、短く話した。説明はしなかった。その場にいた者は、それぞれの受け取り方でその言葉を聞いた。

草がきれいに刈られていく音が、境内に静かに広がり続けていた。

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